事故物件は売却できる?事故物件の定義や告知義務、売却のコツをご紹介
所有している不動産が事故物件になってしまった場合、「安くなるのではないか」「売れないのではないか」と不安に思う方も多いでしょう。
事故物件は心理的な不安を抱かせるため、一般物件よりも売却は難しくなります。
しかし、売却できないというわけではありません。
そこで今回は、事故物件の売却のコツについて解説します。
事故物件の定義や告知義務についても解説しているので、参考にしてください。
事故物件とは?事故物件の定義について
事故物件という言葉を耳にしたことがあっても、定義について詳しくご存じない方も多いのではないでしょうか。
もしかすると、事故物件と自身で思い込んでいるだけで、実際は事故物件の扱いにならないようなケースもあります。
まずは事故物件の定義や事故物件に該当するケース・該当しないケースについてみていきましょう。
1.法的に決められた定義はない
事故物件という言葉は世間的に浸透していますが、事故物件を定義するような法律はありません。
何らかの欠陥や欠点のある物件のことを「瑕疵(かし)物件」と呼び、「心的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の3種類があります。
物理的瑕疵はシロアリや雨漏りなど物理的に物件に欠陥があるもので、法律的瑕疵は建築時に守らなければならない法律に違反している物件のことです。
そして、事故物件は心理的瑕疵に該当します。
2.心理的瑕疵のある物件が該当する
心理的瑕疵とは、買主や借主が心理的に不安やストレスを与える可能性のある物件です。
そして、事故物件は一般的な物件よりも住みにくさを感じる恐れがあるため心理的瑕疵に該当します。
事故物件は法律に定められていないものの、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にて確認することができます。
ガイドラインによると、「人の死について告知する義務はあるが、自然死や不慮の事故に関しての告知義務はない」としています。
つまり、それ以外の死に関しては買主や借主に告知義務があり、告知義務のある物件が事故物件であるといえます。
- 自殺
- 他殺
- 事故死(不慮の事故とはいえないもの)
- 死亡原因が明らかではない場合
- 長期にわたって放置された自然死や不慮の事故
上記のようなケースが事故物件に該当します。
自然死や不慮の虎児は事故物件には該当しないものの、特別清掃が入るようなケースは告知義務が発生するため、事故物件の扱いになります。
具体的な事故物件の例についてご紹介します。
- 室内で殺人事件があった
- ベランダから投身自殺した
- 一人暮らしの高齢者が孤独死し、異臭がするまで気付かれなかった
- マンションのエレベーター事故で死亡した
このように、室内だけではなくベランダやマンションの共用部分などで発生したものについても告知義務があるため事故物件の扱いになるといえます。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
3.事故物件に該当しないケース
国土交通省のガイドラインにおける買主や借主への告知義務がある物件が事故物件に該当するため、告知義務がない場合は事故物件に該当しないといえます。
次のようでは告知義務が発生しません。
- 老衰による自然死
- 病死
- 不慮の事故による死亡
ただし、前項でも説明しましたように老衰や不慮の事故でも特別清掃が入った場合は事故物件の扱いになります。
具体的な事故物件に該当しないケースをご紹介します。
- 高齢者が老衰によって死亡したが、すぐに発見された
- 自宅内にて持病の発作で亡くなった
- 自宅の階段から転倒して死亡した
事故物件は売却することができるのか?
賃貸においては事故物件の場合、一般物件よりも安い金額で借りることができます。
それでは、事故物件の場合の売却は可能なのでしょうか?
1.売却できるが告知義務がある
事故物件だから売却が認められないということはありません。
事故物件でも売却することはできますが、一般物件とは異なり「告知義務」があります。
告知義務とは、売却する前に物件の瑕疵について買主へ伝えなければならないという責任義務です。
事故物件の場合は心理的瑕疵に該当し、心理的瑕疵が存在する事実を買主に対して伝えなければなりません。
告知方法については実際に売主が買主へ直接伝えるのではなく、売買契約の締結前に仲介をする不動産会社が買主へ伝えることになります。
2.告知しなかった場合に起こること
事故物件として告知をすれば売却が難しくなってしまうことや、売却価格が下がってしまうことが想定されます。
そのため、告知をしなければいいのではないかと考える方もいるでしょう。
しかし、心理的瑕疵があることを隠して売却をすれば、告知義務違反として買主や仲介の不動産会社から売買契約の解除だけではなく損害賠償請求される恐れがあります。
そうなれば、家が売却できないだけではなく損害賠償を支払わなければならなくなるため、心理的瑕疵があることは告知しなければなりません。
3.告知義務の期間について
心理的瑕疵があれば告知する義務が発生しますが、告知義務はどれくらいの期間存在するのでしょうか?
事故物件を売却する際の告知義務の期間については法律やガイドラインで明確に定められているわけではありません。
一般的には事故や事件発生から7年が目安とされています。
しかし、事故や事件の衝撃が大きいような場合には、7年が経過しても告知すべきだといえます。
なぜならば、買主が噂などで後から事故や事件について知ったときにトラブルに発展する恐れがあるからです。
例えば、猟奇的な殺人事件が起こった場合などは7年以上が経過していても告知をした方がトラブルを避けられると考えられます。
事故物件の相場価格について
事故物件の場合、一般の相場価格よりも10~50%程度低い売却価格になるといわれています。
ただし、心理的瑕疵は買主の受け止め方によっても異なるため、相場といっても目安でしかありません。
例えば、自然死や不慮の事故死で特殊清掃が必要になった場合であれば10~20%、自殺であれば20~40%、殺人の場合は50%ほど安くなると考えられます。
しかし、立地や周辺環境が魅力的な物件であれば、価格がそこまで下がらないようなケースもあります。
そのため、「事故物件だから安くなってしまうから売却は諦めよう」と自己判断する前に、まずは不動産会社に査定をお願いしてみることをおすすめします。
とくに事故物件など売却の難しい不動産を扱う不動産会社であれば、ご自身で考えるよりも高く売却できる可能性があります。
どのように売却すべき?事故物件の売却方法
事故物件は通常物件とは少し異なる部分がありますが、売却する場合はどのようにすればいいのか疑問に思う方も多いでしょう。
事故物件の売却方法は、「仲介で売却」か「買い取り」の2種類が挙げられます。
1.不動産会社の仲介で売却する
不動産会社に仲介を依頼して売却する方法は、通常物件と違いありません。
ただし、事故物件の場合は不動産会社に敬遠されることがあります。
そのため、事故物件の売却実績のある不動産会社や、売却の難しい不動産を扱うような専門の不動産会社に仲介を依頼することをおすすめします。
売却活動や買主との条件交渉など基本的な売却活動は不動産会社に任せることができるため、売主が行うことは内覧や価格交渉への対応です。
2.不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社の仲介で売却をしないという場合には、不動産会社に物件を直接買取りしてもらう方法が選択肢に挙げられます。
ただし、買取の場合は仲介で売却するよりも買取価格が低くなってしまうため注意が必要です。
なぜならば、不動産会社は買取した物件をリフォームやリノベーションして再販するため、リフォームなどの費用や利益を差し引くために買取価格をできるだけ低く抑えようとするからです。
事故物件を買取りしてもらった場合、相場価格の50%以下の価格になるといわれています。
価格に関係なくどうしても処分したいという場合であれば買取でも問題ないといえますが、まずは不動産会社の仲介で売却活動を試してみた後の最終手段として買取を検討することをおすすめします。
事故物件を高額に売るためのコツ
事故物件は通常物件よりも売却価格が低くなってしまう傾向にありますが、売主の心情としては少しでも高い価格で売却したいものです。
事故物件を高額な価格で売却するために、次の4つのコツを押さえておきましょう。
1.清掃やリフォームで綺麗にする
事故物件を売却する際には、清掃やリフォームをしてできるだけ綺麗にするようにしましょう。
事故物件の場合、通常物件にはないような汚れや臭いが残っているケースもあるため、こうした汚れや臭いや特殊清掃が必須でしょう。
また、事故物件は通常の物件よりも印象がよくないため、外観や室内まで汚い状態では買い手が付きにくくなります。
そのため、事故や事件が起こった箇所だけではなく、他の部屋や外観なども綺麗に清掃を行ってください。
老朽化が進んでいる場合には、リフォームを検討してみてもよいかもしれません。
瑕疵の原因によっては、清掃やリフォームだけではなく、お寺や神社などにお祓いを依頼すれば負の印象を払拭できる可能性があります。
2.時間を空けてから売却する
事故や事件が発生した直後の場合、その事故や事件の印象が強く感じられてしまいがちです。
そのため、売却活動を行っても買い手が付きにくい傾向があります。
売主の精神面や経済面に問題がないのであれば、時間を空けてから売却する方が得策でしょう。
時間が経過するほど事故や事件の印象は薄れやすく、買い手が見つかる可能性も高まります。
ただし、期間を空けたからといって告知義務がなくなるわけではないので、売却活動を行う際には告知を行ってください。
3.解体はしない
事故物件ならば解体した方が売却しやすいのではないかと考える方もいるでしょう。
しかし、解体すれば数百万円もの費用が発生します。
その上、建物を解体しても告知義務がなくなるわけではないため、売却活動では事故物件であることを伝えなければなりません。
そうすれば、解体費用を補えるほどの金額で売却することができずに負債を抱えてしまう可能性や、そのまま売れ残ってしまうことで解体費用のマイナスだけを背負うことになってしまう恐れがあります。
そのため、まずは解体せずにそのまま売り出してみることをおすすめします。
4.事故物件の売却実績のある不動産会社に相談する
事故物件は特殊な物件になるため、どの不動産会社でも取り扱いの実績があるというわけではありません。
事故物件の売却実績の少ない不動産会社の場合、依頼をしてもなかなか売却できない可能性があります。
売却できたとしても、相場よりも大幅に低く価格で売却することになってしまうケースもあるでしょう。
事故物件の売却実績のある不動産会社を選ぶことが事故物件の売却においては大切なことだといえます。
査定の際に複数社を依頼し、手取りの金額がどのくらいになるのか比較してみてください。
事故物件がなかなか売れないときに検討すべきこと
不動産会社の仲介で売却活動をしていても、事故物件がなかなか売れないというケースもあるでしょう。
事故物件が売れない場合には、次の対処法を検討してみてください。
1.更地にしてしまう
事故や事件の内容がショッキングなものだった場合、特殊清掃やリフォームをしても負の印象はなかなか払しょくすることができません。
売主からすると大きな事故や事件ではないと考えていても、買主の立場では異なります。
こうした場合には、建物を取り壊して更地にしてしまうのも一つの方法です。
解体費用は発生しますが、建物がある状態よりも売却しやすくなるでしょう。
ただし、更地にしたからといって必ず売却できるとは限りませんし、解体費用は高額になるため、十分な検討が必要です。
2.不動産会社の変更を検討する
依頼している不動産会社の販売能力が低いことが原因でなかなか売れないというケースもあります。
事故物件の取り扱い経験が少なくて売却活動に苦戦しているようなケースや、不動産会社自体の顧客が少ない可能性があります。
そのため、なかなか売れない場合には不動産会社を変更することを検討してみてください。
不動産会社との契約には期限があるため、契約期限を過ぎれば不動産会社の乗り換えが可能になります。
また、一般媒介契約という契約を締結している場合であれば、複数の業者との契約が認められているため契約期限内でも他の会社と契約することができます。
まとめ
今回は、事故物件の売却について解説しました。
事故物件を売却することはできますが、告知義務があるため相場価格よりも低い金額での売却になってしまうことは避けられません。
しかし、立地や環境によっては高く売却できる可能性はありますし、清掃やリフォームなどでもイメージを変えることができます。
また、売却が難しい物件を得意とする不動産会社に依頼をすれば、高額で売却できる可能性もあるでしょう。
まずは査定や相談をすることから始めてみてください。
- |2023.02.06