住宅ローンが残っている家は売却できる?売却方法や売却のポイントを紹介
住宅ローンが残っているものの、「住宅ローンの支払いが難しい」「離婚するため住まなくなる」「転勤で住めなくなった」などさまざまな理由で家の売却を考えることがあるでしょう。
しかし、住宅ローンが完済していない場合、売却することは可能なのでしょうか?
今回は、住宅ローン残っている家の売却について解説します。
ケースごとの売却方法や、売却する際の注意点なども併せて紹介しているので参考にしてください。
住宅ローン残っている家の売却を検討する際にすべきこと
住宅ローンを組む際には抵当権が住宅の土地や建物に設定されるため、住宅ローンが残っているということは抵当権がついた状態ということになります。
しかし、抵当権が設定されたままでも場合によっては売却することが可能です。
住宅ローンが残っている家の売却を検討する際には、まずは次のことを行いましょう。
1.住宅ローンの残高を確認する
住宅ローンが残っている家の売却を検討するのであれば、まずは住宅ローンの正確な残高を知る必要があります。
なぜなら、住宅ローンの残高によって売却方法や対処法が異なってくるからです。
住宅ローンの残高の確認は、次の方法で行うことができます。
①返済予定表を確認する
住宅ローンを契約した際に、金融機関から「返済予定表」が発行されます。
返済予定表には、借入金額や毎月の返済額、返済予定日、元金や利息の内訳などを確認することができます。
返済予定の詳細について記載されているため、現在の住宅ローンの残高も把握することが可能です。
住宅ローンの契約時に郵送で金融機関より送られてきているはずですが、紛失してしまったというようなケースもあるでしょう。
場合によっては借入先の金融機関のホームページに住宅ローン契約者専用のページなどが設定されていることがあり、返済予定表が確認できます。
もしホームページから確認できなくても、金融機関に再発行を依頼できるケースもあります。
ただし、再発行するには本人確認の手続きや再発行手数料が必要になる可能性があります。
②金融機関から送付される残高証明書を確認する
多くの場合、毎年「残高証明書」を金融機関が郵送してくれます。
残高証明書とは、年末時点の住宅ローンの残高を証明するための書類になるため、毎年10月~11月に送付されます。
残高証明書を紛失したという場合には、再発行が可能です。
ただし、金融機関によっては再発行手数料が必要になることもあるので注意してください。
③金融機関に問い合わせる
借入している金融機関に問い合わせれば、残高を確認することができます。
窓口で確認する場合には、ローンを借入している人の身分証明書や返済口座のわかるものを持参してください。
近年では多くの金融機関がホームページで手軽に確認できるようになっています。
ただし、インターネットバンキングなど金融機関のインターネットサービスへの登録が必要になります。
2.売却価格を査定してもらう
住宅ローンの残高を確認したあとは、不動産会社に売却価格の査定をしてもらいます。
正確な売却額は買主との交渉で決まりますが、査定してもらうことで価格相場を知ることができます。
売却価格が分かれば、売却方法や対処法について検討しやすくなります。
査定額は不動産会社によって異なるため、複数社の査定を受けて比較することをおすすめします。
3.売却金額でローンを返済できるか確認する
不動産会社による査定結果を基に、売却金額でローンを返済できるかどうか確認します。
査定額が住宅ローンの残高を大幅に上回る「アンダーローン」の場合には、売却することで住宅ローンを完済できます。
もしアンダーローンにならない場合でも、住宅ローンの残高が少なければ自己資金や新規借り入れで完済できる可能性があるでしょう。
しかし、査定額が住宅ローンよりも大幅に下回る「オーバーローン」の場合には、通常の売却とは異なる対処を考えなければなりません。
住宅ローン残っている家を売却する方法
説明住宅ローンが残っている家を売却する場合、前述したように「アンダーローン」と「オーバーローン」で対処法が変わります。
それぞれのケースの売却法やローンの対処法についてご紹介します。
1.アンダーローンの場合
アンダーローンなら売却金額が住宅ローンの残高を上回ることになるため、その売却金額で住宅ローンを返済することができます。
そのため、この場合は通常の不動産売却の方法で売却を行います。
ただし、査定の時点でローンの残高よりも査定額が上回っていたとしても、必ず査定額で売却できるとは限りません。
また、仲介手数料などの諸費用が発生することも考慮した上で不動産会社に売却の相談を行いましょう。
2.オーバーローンの場合
家の売却後も住宅ローンが残ってしまうようなケースを「オーバーローン」と呼びますが、オーバーローンの場合には次の3つの方法で対処することができます。
①通常売却+貯蓄で完済する
オーバーローンでも住宅ローンの残高が少ないのであれば、貯蓄をあわせることで住宅ローンを完済することができます。
オーバーローンでも貯蓄で完済できるのであれば、通常の不動産売却の方法で売却活動を行います。
ただし、この場合は残高を一括で返済しなければなりません。
そのため、一括返済をしたあとの生活も考慮しつつ十分に検討してください。
②住み替えローンを利用する
現在住んでいる家を売却し、新しい家を購入するという場合には、「住み替えローン」を利用できます。
住み替えローンとは、売却しても返済できない住宅ローンの残高と次に購入する家の代金を合算して借り入れを行うことです。
例えば、売却しても住宅ローンが500万円残ってしまい、次に購入する家が3000万円だった場合には3500万円を借入し、その中の500万円で前の家の住宅ローンを完済するということになります。
③任意売却する
売却後の住宅ローンの残高が大きく、支払うことが難しい場合には「任意売却」という方法の売却を行います。
任意売却は通常売却とは異なる売却方法です。
売却活動自体は通常の売却方法と違いはありませんが、売却後のローン残額を分割で返済できるというメリットがあります。
収入や生活状況などを高書して返済額を金融機関と相談することができるため、無理のない範囲での返済が可能です。
ただし、任意売却するには金融機関の同意が必要になります。
住宅ローン残っている家を売却するときの注意点
住宅ローンが残っている家を売却する際には、いくつか注意すべき点があります。
売却手続きを進める中や、売却後に後悔しないようにするために、次の注意点について知っておきましょう。
1.共有名義は名義人全員の同意が必要
住宅ローンが共有名義になっているようなケースもあるでしょう。
この場合、家の売却には名義人全員の同意が必要になります。
もし相手が売却に合意しない場合でも、住宅ローンが残っている場合は単独名義に変更することができません。
そのため、名義人としっかり話し合いを行う必要があります。
2.住宅ローン残っている家を売却する時には費用が発生する
住宅ローンの残っている家だけに限ったことではありませんが、家を売却する際には費用が発生します。
売却益が出るだけではなく、手続きの中で発生する費用があることも考慮して売却方法や対処法を検討しなければなりません。
住宅ローンの残っている家の売却時に発生する代表的な費用についてご紹介します。
①印紙税
家の売却が決まれば、売主と買主の双方で不動産売買契約書を作成します。
この契約書には印紙税が課税されることになっており、収入印紙を貼付することで納付します。
この印紙税は、売却金額ごとに異なります。
平成26年4月から令和6年3月31日までに作成される場合は軽減税率が適用されるため、下記の表を参考にしてください。
売却額 | 本則課税 | 軽減税率 |
---|---|---|
50万円~100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円~1000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1000万円~5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5000万円~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
②抵当権抹消登記費用
住宅ローンを完済すれば、家に設定されている抵当権を外すことになります。
その際には、抵当権抹消登記費用として不動産1件あたり1,000円が発生します。
土地と建物はそれぞれ1件ごとの扱いになるため、土地と建物を売却した場合の費用は2,000円になります。
③司法書士報酬
住宅ローンを完済しても自動的に抵当権が抹消されるわけではなく、手続きを行う必要があります。
完済したときに金融機関から抵当権抹消のための書類が送付されるため、その書類に必要事項を記載して手続きを進めます。
ご自身で手続きをすれば費用は発生しませんが、司法書士に依頼する場合には司法書士報酬が発生します。
抵当権抹消登記手続きの司法書士報酬は、1万円~2万円が相場です。
④仲介手数料
不動産売却を仲介した不動産会社へ、「仲介手数料」として費用を支払います。
仲介手数料には支払い上限が定められており、次のようになっています。
- 200万円以下の場合 … 売却価格の5%
- 200万円以上400万円以下の場合 … 売却価格の4%+2万円
- 400万円以上の場合 … 売却価格の3%+6万円
この計算方法はあくまでも上限になるため、不動産会社によって仲介手数料の金額は異なります。
仲介手数料の支払いは、買主と売買契約を結んだときに半額を支払い、物件の引き渡しの際に残りの半額を支払うことが一般的です。
⑤譲渡所得税
家を売却したことで利益が出た場合、確定申告をして譲渡所得税を支払う必要があります。
売却益は住宅ローンに充てたため利益がないから申告は必要ないというわけではありません。
ここでいう利益は、「譲渡価格−(取得費用+譲渡費用)」で算出します。
つまり、家を譲渡した価格から購入した時の費用と譲渡で発生した費用を差し引いた金額が利益になるということです。
譲渡所得税は、上記で算出した利益に税率を掛けた金額になります。
税率は、家の所有期間が5年以下の場合は39.63%ですが、5年を超える場合は20.315%です。
住宅ローン残っている家を売却するときのポイント
住宅ローンが残っている家を売却するには、ローンの残高や査定価格から売却方法について検討します。
しかし、費用なども発生することを考慮した上で、生活の立て直しができるのかどうか考える必要があります。
売却する際には次のポイントを押さえ、売却の役に立てましょう。
1.できるだけ高く売却してくれそうな不動産会社を探す
高い金額で売却されるほど住宅ローンの残額を減らすことができます。
そのため、できるだけ高く売却してくれそうな不動産会社を探すことが大切です。
基本的に通常売却でも任意売却でも、売却活動や買主との価格交渉は不動産会社が行います。
不動産会社選びで失敗すれば、買主が見つからないことや相場より低い価格で売却することもあるでしょう。
不動産会社選びでは複数の不動産会社を比較し、実績やアフターフォロー、相談への対応などから高く売却してくれそうな不動産会社を選ぶようにしてください。
2.支払う税金を抑える
家の売却時には税金を含め、諸経費が発生します。
少しでも費用を抑えるためには、税金を抑えるための特例を利用できないか確認してみることが大切です。
税金を抑えられる特例の中でも代表的なものを2つご紹介します。
①3000万円特別控除
自宅を売却した際に、譲渡所得から3000万円を控除できるという特例です。
「(譲渡所得−3000万円)×税率」で算出された金額が、特例適用後の譲渡所得税になります。
つまり、譲渡所得が3000万円以下ならば譲渡所得税を0円にできるということです。
ただし、この特例を受けるには自宅に住まなくなってから3年以内に売却するなど一定の条件を満たしていなければなりません。
②損益通算及び繰越控除の特例
売却後にオーバーローンになる場合には、損益通算及び繰越控除の特例を使える場合があります。
売却によって生じた損益を給与所得など他の所得から控除し、源泉徴収されている所得税が還付されるという特例です。
払いすぎた税金を取り戻すための特例になるため、家の買い替えなどを行わない売却でオーバーローンになる場合は使用できます。
3.任意売却なら売却に発生する費用を売却益で支払える
住宅ローンの支払いが難しくなって任意売却を行うという場合であれば、売却で発生する費用は売却益から支払うことができます。
そのため、売却するための費用を新たに準備する必要はありません。
しかも、金融機関に相談することで引っ越し費用を捻出してもらえることがあります。
引っ越し費用が抑えられることは魅力ですし、売却後のローンの返済負担も軽減されるため、生活の再建をしやすい売却方法だといえます。
まとめ
今回は、住宅ローン残っている家の売却について解説しました。
アンダーローンになるのかオーバーローンになるのかで、検討すべき売却方法は異なります。
まずは住宅ローンの残高を確認し、複数の不動産会社で家の査定をしてもらってから検討してみましょう。
不動産会社選びは住宅の売却において最も重要な部分になるため、信頼のできる不動産会社を選ぶようにしてください。
- |2023.02.08